（ 4 ） 対 が ん 協 会 報 2014年8月1日
７月15日、海を見下ろす高台に位 置する島根県江津市立青陵中学校で、 「中学生と一緒に『がん』を学ぼう」とい
う催しが行われた（主催：島根県健康 推進課、島根県教育庁、後援：江津市 教育委員会、協力：日本対がん協会）。 講師は順天堂大学大学院教授で循環器 専門医の佐瀬一洋先生。自身もがんを 経験した佐瀬先生が中学２年生97人に 向けて、がんについての授業を行った。 がんは２人に１人がなる身近な病気 で、日本人の死因の第１位であるこ と。早期診断が重要であるにも関わら ず日本のがん検診の受診率は先進国で 最低であること。食習慣に気を付けた
り、禁煙をしたりすることが大事であ ること。日頃から正しい情報や相談で きる相手を大切にして、かけがえのな い人生を精一杯生きようなどと盛りだ くさんの内容を手作りのスライドを使 いながら説明した。心臓の専門医であ る佐瀬先生が、こうした活動に取り組 むようになったきっかけとして、自身 のがん闘病の体験を語ると、子どもた ちはぐっと乗り出してきた。
４年半前に自身の身体にがんが見つ かった時の動揺と悲しみ、医師である がゆえに今後の予測がついてしまう苦 しさ、そしてがんから復活したときに 改めて感じたがん教育の大切さ、医療
への感謝、研究への希望など体験者な らではの話に会場は聴き入った。 佐瀬先生が力を込めて話した中に、 がんのイメージの偏りということがあ る。がんを題材にした映画やドラマは 決まって患者の死で終わるが、実際の がんはもう「不治の病」ではないとグ ラフを示しながら強調した。
特集 がん教育
組んできた。２人に１人がかかる国民病について、子 どものうちから科学的な知識を身につけることが大切 だと考えるからだ。がん教育基金を設置し、がん教育 用のＤＶＤの制作や、がんの専門医が中学校や高校を 訪ねてがんに関する出前授業を行う「ドクタービジッ ト」などを実施してきた。
課題はたくさんあるが、今後も一層地域や教育現場 と手を携えてがん教育に取り組んでいく予定だ。７月 に実施した２つの取り組みを報告する。
「がん教育」への期待と関心が高まっている。背景 には政府が2012年６月に閣議決定した「がん対策推 進基本計画」にがん教育の推進が盛り込まれたことを 受けて、文部科学省が今年度から「がんの教育総合支 援事業」に乗り出したことがある。文科省は有識者か らなる「がん教育の在り方に関する検討会」の設置 や、全国21か所の道府県・指定都市でモデル事業を 実施するなど、2018年度に予定されている学習指導 要領の改訂も視野に、がん教育を強化していく。 日本対がん協会では早くから独自のがん教育に取り
島根県の中学で「がん教育」のモデル授業
地域の関係者で意見交換会も
アンケートに記入する生徒たち
今回の試みのもう一つの目玉は、授 業を参観した島根県の教育関係者や地 域保健関係者などによる意見交換会の 開催だ。県内の公立小中学校の教諭や 養護教諭を始め、市町村の健康増進課 や地域医療対策課の保健師や専門職
員、事務局を務めた島根県教育庁の担 当者らが一堂に会し、日本対がん協会 の小西マネジャー、講師の佐瀬教授も 参加して、「がん教育をどのように進 めるべきか」をテーマに熱心に意見交 換した。
講師の佐瀬一洋先生
問を入れると集中力が増す」など、教 えるプロならではの実践的な意見も。 「授業時間の確保がむずかしい」「誰が
教えるのか？」「教える時期は小学生が 良いのか？それとも中学生？」「子宮が ん検診の重要性を考えると、高校生で は遅い」など様々な課題が浮かび上が った。
参加者の多くが口にしたのは「子ど もの心を傷つけない、不安にさせない ような授業の進め方」や「子どもの親 など身近にがんで闘病中や、亡くなっ た人がいる場合の配慮」についてで、 それは取りも直さず現場の教諭や関係 者の負担の重さを表していると言えよ う。その一方で子供の発信力の大きさ に期待する意見も多く、がん教育の可 能性を感じさせた。
「医学的な話はこども たちには少し難しいので は」「わかりやすい言葉の 選び方や、見せ方の工夫 が必要」といった感想か ら、「今日の人数は多す ぎる。１クラス程度が適 当。それをさらに小グル ープに分けてグループワ ークができると良い」「質
